全3回月刊連載シリーズ! 仲島正教氏特別寄稿(3月号)
2012年03月21日
「本気ですれば『壁』はやがて『扉』に変わるから」
 


                                       教育サポーター(元小学校教師)  仲島正教

  私の教え子に、上田信子(仮名)という子がいます。今はもう29歳の素敵な女性です。彼女を5年生で教えたのですが、当時私が口癖のように言っていたのが
「一生懸命にしたらええことがあるぞ」
  それから数年後、私は家の近くのラーメン屋さんでこんな言葉を見つけました。誰の言葉かはわかりませんが、メニューの横に額に入れてありました。
                ”本気ですれば”
           本気ですれば、たいていのことは出来る
           本気ですれば、何でもおもしろい
           本気ですれば、誰かが助けてくれる
           本気ですれば、未来が変わる
 
  教え子の上田信子は、やがて教師をめざすようになり、大学を卒業後、しばらく地元の高校で臨時講師を勤めます。そんな時に、先ほどのラーメン屋さんの言葉を伝えます。彼女は「いい言葉ですね」と言ってくれました。
  そして教員採用試験に合格し、遠く離れたまったく知らない土地の高校に新任教諭として赴任しますが、その学校は、なかなか大変な高校でした。中途退学する生徒もけっこういるような高校で、やんちゃな生徒も多かったのです。きゃしゃな女の子だった彼女がそんな高校生相手に悪戦苦闘を始めます。小さな体からどすのきいた声で叱るので「関西から怖い女の先生が来た」と言われていたそうです。生徒指導上の問題が山ほど起きます。でもくじけずに「本気で向かう」上田先生に、生徒からは「怖いけどいい先生」と評され、「上田親分!(笑)」とだんだんと心を開いていきます。ダラダラしていた部活動も活発になります。劣等感を持っていた生徒たちも少しずつ自信を取り戻していきました。
  そして高校最後の日。
「上田先生、ありがとう。俺がここまで来られたのは先生のおかげや」
「ワタシがんばるから、センセー見ててや」
「先生が担任でホンマよかったで」
と覚えた関西弁であいさつをしてくれました。先生も生徒も涙、涙、涙の卒業式でした。
 
 後日、私は上田先生と出会います。
「教師って本当に大変だけど、ええもんですね」
そう言う上田先生に私は聞きました。
「どうしたらそんなやんちゃな奴がちゃんとするようになったんや?」
すると上田先生は、生徒にいつもこう言っていたというのです。
「やってみろ分かるから。やってみろ変わるから。
本気ですれば『壁』はやがて『扉』に変わるから」